この記事のポイント

  • itertoolsを使ったイテレーター合成設計の崩壊ポイントをレビューできる
  • 遅延評価責務と状態管理責務の整理技法を理解できる
  • イテレーター合成の安全設計と読みやすさ設計を体系化できる

そもそもitertoolsとは

Python標準ライブラリのitertoolsは、イテレーター操作を効率化・合成・高階操作を提供するユーティリティ群です。

代表的な関数は以下です。

  • chain:複数イテレーターを直列合成
  • islice:スライス的イテレーション
  • tee:イテレーターの複製
  • zip_longest:長さ不一致zip
  • groupby:隣接グループ化
  • count:無限増加イテレーター
  • cycle:無限循環

「イテレーターを責務ごとに合成・分離・遅延評価可能にする道具群」が本質です。

なぜこれをレビューするのか

現場では以下の失敗が多発します。

  • 無計画なchain合成による責務肥大
  • 状態依存groupby誤用
  • 無限イテレーター管理失敗
  • teeによる予想外メモリ肥大
  • 複合イテレーター構成の可読性崩壊

レビューアーは「誰が状態を保持し、誰が合成し、誰が評価するのか?」を冷静に読み解く必要があります。

レビューアー視点

  • 合成責務が抽象化整理されているか
  • 各イテレーターの状態保持が明確化されているか
  • 遅延評価が意図通り設計されているか
  • tee使用時の副作用認識が設計者にあるか
  • 合成構造が保守可能な粒度に整理されているか

開発者視点

  • イテレーター合成=責務分離の技術
  • chainは直列責務、groupbyは分類責務
  • teeは複製責務(注意深く使用)
  • 無限系列は明示的制御層で管理
  • 小粒なパイプライン設計意識を徹底

良い実装例

なぜこの実装が良いのか

  • 合成責務が役割単位で分離
  • 遅延評価と状態制御が安定
  • teeの副作用範囲も明示
  • 読み手が合成構造を自然に追える
# data_pipeline.py

from itertools import chain, islice

def read_file_lines(file_paths: list[str]):
    return chain.from_iterable(open(path) for path in file_paths)

def strip_lines(lines):
    return (line.strip() for line in lines)

def limited_lines(lines, limit: int):
    return islice(lines, limit)

# 利用
files = ["a.txt", "b.txt"]
lines = read_file_lines(files)
cleaned = strip_lines(lines)
limited = limited_lines(cleaned, 100)

for line in limited:
    print(line)
補足

責務単位で小粒化された合成設計が可読性・安全性・テスト性を高めます。
レビューアーは構造分離有無を重点確認します。

レビュー観点

  • 合成イテレーターは責務分離粒度になっているか
  • chain・islice等の適用範囲が整理されているか
  • teeは正しく副作用を意識して使われているか
  • 無限イテレーターは外部層で明示制御されているか
  • 合成構造が保守困難なネスト肥大を起こしていないか

良くない実装例: ケース1(責務肥大合成パターン)

# bad_flattened_responsibility.py

from itertools import chain, islice

def load_data(files, limit):
    return islice(
        (line.strip() for line in chain.from_iterable(open(f) for f in files)),
        limit
    )
@Reviewer
合成構造が肥大化しており、責務分離・可読性が崩壊しています。役割単位へ分離してください。

問題点

  • 合成構造がネスト肥大
  • 各処理責務が追えない
  • テスト不能化

改善例

# good_responsibility_split.py

lines = read_file_lines(files)
cleaned = strip_lines(lines)
limited = limited_lines(cleaned, 100)

ネスト肥大は責務分離合成で必ず分解が設計原則。レビューでは読みやすさと修正容易性を確認します。

良くない実装例: ケース2(tee誤用によるメモリ肥大)

# bad_tee_excessive.py

from itertools import tee

def process_twice(data):
    a, b = tee(data)
    for item in a:
        print(item)
    for item in b:
        print(item)
@Reviewer
teeは全要素キャッシュされるため、巨大イテレーターで使用するとメモリ肥大を誘発します。副作用認識を徹底してください。

問題点

  • teeのキャッシュ副作用未設計
  • データ量次第で実行時肥大事故
  • 遅延評価メリット喪失

改善例

# good_no_tee.py

data_list = list(data)
for item in data_list:
    print(item)
for item in data_list:
    print(item)

teeは小粒なイテレーター限定使用が原則。大規模ストリームでは積極回避が安全です。
レビューではtee使用可否を重点確認します。

良くない実装例: ケース3(groupbyの状態依存崩壊)

# bad_groupby_unsorted.py

from itertools import groupby

data = [("A", 1), ("B", 2), ("A", 3)]
for key, group in groupby(data, key=lambda x: x[0]):
    print(key, list(group))
@Reviewer
groupbyは隣接グループ化であり、事前ソート必須です。状態依存誤解によるバグが発生します。

問題点

  • groupbyは安定状態依存アルゴリズム
  • 並び順依存性未考慮
  • 集計誤解リスク

改善例

# good_sorted_groupby.py

from operator import itemgetter

data.sort(key=itemgetter(0))
for key, group in groupby(data, key=lambda x: x[0]):
    print(key, list(group))

groupby適用前は必ずソート安定性確認を徹底します。レビューでは「groupby+sortセット原則」を即確認します。

良くない実装例: ケース4(無限イテレーター安全設計漏れ)

# bad_infinite_iteration.py

from itertools import count

for i in count(1):
    print(i)
@Reviewer
無限イテレーター使用時に停止設計が漏れています。外部制御責務を明示してください。

問題点

  • 無限イテレーター停止責務未設計
  • 終了設計不備
  • 運用事故誘発

改善例

# good_infinite_controlled.py

for i in islice(count(1), 100):
    print(i)

無限系は外部層で明示的制御設計が原則。レビューでは「停止条件有無」を即確認します。

観点チェックリスト

まとめ

itertoolsレビューは「イテレーター=状態管理責務」の可視化訓練です。
レビューアーは常に

  • 誰が状態を持ち、誰が合成するか?
  • 遅延評価は維持されているか?
  • 合成構造は読みやすいか?

を読み取り、安全でメンテ可能なストリーム処理設計を実現していくレビュー技法を身につけていきます。
itertoolsレビューは現場設計育成教材として非常に有効です。