C++17 サードパーティ・ライブラリ呼び出し時の例外監視レビュー|外部依存モジュールからの障害流入をレビューアーがどう見抜くか
この記事のポイント
- サードパーティ呼び出しでの例外監視設計をレビューアーが読み解く技術を整理
- 外部依存ポイントの障害封じ込め設計をレビューで指摘できるようになる
- モニタリング連携・復旧可能性判断を設計レベルでレビュー支援できるようにする
そもそも「サードパーティ呼び出し時の例外監視」とは
C++開発現場では、多くの外部依存を持ったライブラリ/API/SDKを利用する。
- OSSライブラリ(Boost、gRPC、OpenSSL など)
- 商用SDK(AWS SDK、DB Driver など)
- Cライブラリラップ(libcurl、libxml、SQLite など)
これらは内部実装詳細がブラックボックス化している一方で、
障害発生時に自プロセスへ例外通知を流入させる設計が多い。
レビューアーは「どのような例外が流入してくるか」を明確に読み取り、
外部依存ポイントの封じ込め設計をレビューする責任を持つ。
なぜこれをレビューするのか
- 外部ライブラリ例外が未監視状態で内部層に伝播しやすい
- API契約が脆弱で想定外障害がシステム全体を停止させ得る
- ログ/監視/通知がサードパーティ障害を捉えられずサイレント障害化
- ライブラリバージョン差異で新例外種が流入する可能性
レビュー段階で外部境界設計を「監視ポイント化」しておくことで
障害検出性・診断性・隔離性を大きく向上できる。
レビューアー視点
- この外部呼び出しは何をthrowする可能性があるのか?
- 呼び出し契約に明示されていない障害流入が存在しないか?
- ログ統合設計に含まれているか?
- 復旧可能性を内部層へ強制転嫁していないか?
- 監視設計(アラート・通知)が外部障害対応を前提にしているか?
開発者視点
- サードパーティ例外は内部層に直接流さない
- 専用封じ込め層で責務分離する
- 契約破綻/外部障害/ネット障害を例外分類として整理
- 発生元ログを常に外部API名義で明示化
良い実装例
封じ込め用Facade層パターン
外部API呼び出し封じ込め
#include <stdexcept>
#include <string>
class PaymentGateway {
public:
void charge(int amount) {
try {
sdk_.callCharge(amount);
} catch (const ThirdPartySdkException& e) {
throw PaymentGatewayException("Payment failure: " + std::string(e.what()));
}
}
private:
ThirdPartySdk sdk_;
};- SDK例外 → 内部専用カスタム例外に変換
- 内部層にサードパーティ型流入させない
監視情報を埋め込む統合設計
ログ出力統合型
try {
gateway.charge(5000);
} catch (const PaymentGatewayException& e) {
logger.error("Payment subsystem failure: {}", e.what());
monitoring.notify("PAYMENT_FAILURE", e.what());
}- サブシステム単位での障害監視責務を可視化
レビュー観点
- サードパーティ型の例外を内部API契約で直透過していないか
- 封じ込め層(Facade/Adapter層)設計が導入されているか
- カスタム例外型に明示変換しドメイン責務表現が行われているか
- 監視設計・ログ設計がサブシステム単位で整理されているか
- ライブラリアップデート時の例外追加影響検討が想定されているか
良くない実装例: ケース1(直透過型)
サードパーティ型を直接透過
class PaymentService {
public:
void charge(int amount) {
sdk_.callCharge(amount); // ThirdPartySdkException流入
@Reviewer外部SDK例外型が透過しています。内部契約用に専用カスタム例外へ変換し封じ込めてください。 }
private:
ThirdPartySdk sdk_;
};改善例
改善例(封じ込め層導入)
class PaymentService {
public:
void charge(int amount) {
try {
sdk_.callCharge(amount);
} catch (const ThirdPartySdkException& e) {
throw PaymentGatewayException("Charge failed: " + std::string(e.what()));
}
}
private:
ThirdPartySdk sdk_;
};良くない実装例: ケース2(監視責務分離不足)
監視統合されていない障害放流
void processOrder() {
payment.charge(1000);
@Reviewerサードパーティ呼び出しは障害監視対象です。ログ統合とアラート通知を組み込んでください。}改善例
改善例(障害検知統合)
void processOrder() {
try {
payment.charge(1000);
} catch (const PaymentGatewayException& e) {
logger.error("Payment failure: {}", e.what());
monitoring.notify("PAYMENT_SUBSYSTEM_FAILURE", e.what());
}
}良くない実装例: ケース3(複数ライブラリ障害未整理)
多重サードパーティ流入混在
void process() {
a.callA();
b.callB();
@Reviewer各ライブラリ障害分類が統合されていません。封じ込め統合層で障害分類を整理してください。}改善例
改善例(統一封じ込め層設計)
class ThirdPartyFacade {
public:
void callA() {
try { sdkA.call(); }
catch (const ThirdPartyAException& e) { throw SubsystemAFailure(e.what()); }
}
void callB() {
try { sdkB.call(); }
catch (const ThirdPartyBException& e) { throw SubsystemBFailure(e.what()); }
}
private:
ThirdPartyA sdkA;
ThirdPartyB sdkB;
};PlantUML:外部依存障害封じ込め構造
封じ込め層命名統一指針
| 層名 | 役割 |
|---|---|
XXXAdapter |
ライブラリAPIラッパ層 |
XXXFacade |
複数ライブラリ統合層 |
XXXClient |
外部依存インフラ層 |
XXXGateway |
外部SaaS/業務外部依存層 |
レビューアーは命名規約統一設計が守られているかも確認対象に含める。
API契約設計例
外部依存透過契約禁止例
// BADパターン
void charge(int amount) throws ThirdPartySdkException;
// GOODパターン
void charge(int amount) throws PaymentGatewayException;- 外部例外種を契約上漏洩させない
ロギング統合例
ログ統合例
try {
payment.charge(5000);
} catch (const PaymentGatewayException& e) {
logger.error("Payment subsystem failure: {}", e.what());
monitoring.notify("PAYMENT_FAILURE", e.what());
}- 障害情報は必ずログ/監視とセット
観点チェックリスト
まとめ
レビューアーがサードパーティ例外監視設計で常に問うべきは
「この障害が内部へどう流入し、どの層で止まる設計か?」
です。
- 外部依存は封じ込め層責務設計で吸収
- 監視通知は障害種類分類で整理統合
- API契約は外部例外型透過禁止で守る
レビュー現場では
「このライブラリ障害流入はどの層で捕まえますか?」
と粘り強く設計議論を促せるレビュー文化が品質を大きく左右します。
