この記事のポイント

  • メモリリーク検出体制をレビューアーがどう設計確認するか整理
  • 設計レビュー観点と運用レビュー観点を両軸で整理
  • 現場レビューアーが持つべき「発生させない・見逃さない技術」を解説

そもそもメモリリーク検出体制とは

C++におけるメモリリークは
「不要になったメモリが正しく解放されず残留する状態」です。

void process() {
    int* p = new int(10);
    // delete p; を忘れる
}

RAII設計徹底が原則とはいえ、設計崩壊や例外経路次第で依然として発生します。
よってレビューでは

  • 設計上の漏れ(構造崩壊型リーク)
  • 運用上の漏れ(開発体制型リーク)

の両面で検出体制を確認する必要があります。

メモリリークは現場レビューで以下に整理される
  • 設計段階のRAII崩壊箇所検出
  • コーディング時のnew/delete残骸確認
  • CI・自動化による継続監視体制

レビューアーは「そもそも漏れない設計になっているか」「監視体制で検出可能か」を確認します。

なぜこれをレビューするのか

C++のメモリリークは
「設計→実装→運用」 どの層でも発生要因があります。

  • スコープ崩壊によるRAII抜け
  • 共有所有権破綻によるshared_ptr残留
  • コンテナ解放漏れ
  • 循環参照
  • 開発体制による事後検出失敗

レビュー段階で設計上の漏れ封じ込め+検出体制構築を指摘できることが品質担保に直結します。

レビューアー視点(設計レビュー)

  • new/delete露出が残っていないか
  • unique_ptr / shared_ptr / weak_ptr の責務分離が明確か
  • 所有権がどこかに浮いて残らないか
  • スコープ寿命違反を静的に読み取れるか

レビューアー視点(運用レビュー)

  • メモリリーク検出ツールの常用体制があるか
  • CI統合で監視自動化されているか
  • 再現しにくいリーク経路がCI回収できるか
  • 開発者教育水準がRAII徹底寄りか

良い設計例

想定:ApiRequestLog管理設計

良い設計例
#include <memory>
#include <vector>
#include <string>

struct ApiRequestLog {
    int requestId;
    std::string endpoint;
    std::string clientIp;
    int responseCode;
    time_t requestedAt;
};

class LogManager {
public:
    void save(std::unique_ptr<ApiRequestLog> logEntry) {
        logs_.push_back(std::move(logEntry));
    }

private:
    std::vector<std::unique_ptr<ApiRequestLog>> logs_;
};

良いポイント

  • unique_ptr移譲で寿命責務が読み取れる
  • delete露出ゼロ
  • スコープ終了で自動解放保証
  • 例外安全完全保証

レビュー観点

  • new/delete責務が残存していないか
  • 所有権移譲が明示されているか
  • コンテナ統合で寿命管理されているか
  • 例外発生時も解放保証されているか
  • weak_ptr導入で循環参照対策されているか
  • ツール活用体制が設計段階で整備されているか

良くない実装例: ケース1(設計漏れ型リーク)

問題例①
class LogManager {
public:
    void save(ApiRequestLog* logEntry) {
        logs_.push_back(logEntry);
    }

private:
    std::vector<ApiRequestLog*> logs_;
};
@Reviewer
生ポインタ保持は寿命責務が設計崩壊します。unique_ptrで所有権移譲し、リーク責任を集中統治してください。

改善例

改善例①
void save(std::unique_ptr<ApiRequestLog> logEntry) {
    logs_.push_back(std::move(logEntry));
}

良くない実装例: ケース2(循環参照型リーク)

問題例②
struct Node {
    std::shared_ptr<Node> next;
};
@Reviewer
shared_ptr同士の相互保持は循環参照リークを発生させます。片側をweak_ptrに分離して循環遮断してください。

改善例

改善例②
struct Node {
    std::shared_ptr<Node> next;
    std::weak_ptr<Node> previous;
};

良くない実装例: ケース3(監視体制未整備)

問題例③
// 開発フロー上、リーク検出は目視確認のみ
@Reviewer
Valgrind, AddressSanitizer, LeakSanitizer等の自動検出体制をCIに統合してください。目視依存では長期的にリーク温床化します。

改善例

改善例③
- CI統合ツール: Valgrind / asan / lsan / Dr.Memory 併用
- 開発者ローカルでのasanビルド必須化

観点チェックリスト


まとめ

メモリリークレビューは
「設計ミスを発生させない+万一の検出体制を敷くレビュー」です。

レビューアーは常に

  • 所有権が浮いて残っていないか?
  • 構造崩壊の起点になる箇所はないか?
  • 現場運用で検出体制は整備済みか?

を読み解き、RAII徹底+自動検出の二重安全構造に誘導するのが役割です。

UML Diagram