walkthrough|コードを口頭で説明するレビュー手法とその効用
walkthrough|コードを口頭で説明するレビュー手法とその効用
概要
walkthrough
(ウォークスルー)は、実装者が自分のコードを口頭で説明しながらレビュアーと一緒に確認していくレビュー手法です。
文章ベースのレビューで伝わりにくい設計意図や懸念点を、リアルタイムの対話で補完できるのが最大の特徴です。
「黙ってコードを読む」のではなく、「説明を聞きながら一緒にコードを歩く」イメージです。
活用シーン
シーン | 利点 |
---|---|
大規模PRや初期設計レビュー | 全体構造を把握しやすく、認識齟齬を減らせる |
設計意図を含む判断の共有 | コードでは伝わらない意図や判断根拠をその場で説明できる |
新人育成や知識共有 | 言語化トレーニングとレビュー学習を兼ねる |
緊急対応や短期集中レビュー | 文章に時間をかけず、スピード感のある確認が可能 |
レビューが長引きそう・認識に差が出そう──そんなときほどwalkthroughが効果を発揮します。
実施手順の基本
- PR作成者がレビュアーにwalkthrough希望を伝える
- ZoomやSlack huddleなどで画面共有を開始
- 実装者が変更点・設計意図・迷ったポイントなどを順に説明
- レビュアーは質問や補足、改善提案をリアルタイムで返す
- 必要に応じて議論し、修正方針を合意
walkthroughは「通すため」ではなく、「理解して合意するため」のレビューです。議論の余地を残すことが重要です。
会話例:walkthrough中の対話
Author: この処理は複数条件を含んでいて、最初は分岐で書いたのですが読みづらかったのでstate管理に寄せています。
Reviewer: なるほど、それでuseReducer使ってるんですね。状態のパターンは一覧化されてますか?
Author: そこまではしてないですが、補助的なテーブル作ってもいいかもしれません。
効果と副次的メリット
- 設計意図や背景を伝える練習になる
- 仕様ミスや前提誤認が早期に発見されやすくなる
- レビュアーの理解速度が上がる(視覚+聴覚の相乗効果)
- 実装者が設計・構造を言語化することで自分でも問題に気づける
自分のコードを「説明していて気づく」ことは意外に多いです。walkthroughはその機会を与えてくれます。
チームでの導入方法とルール整備
- PRテンプレートに「walkthrough希望」チェック欄を追加
- 毎週特定の時間をwalkthrough枠として確保
- 「重要PRはwalkthroughでレビュー開始」の方針を整備
- 終了後にレビューコメントを残すことで記録にも残す
### このPRについて
- [x] walkthrough希望(対面 or huddle)
- [ ] 通常レビューでOK
関連用語
pair-review
:レビュアーと実装者が一緒にレビューするスタイルresponsibility
:意図の説明を通じて責任の明確化にも貢献readability
:「読みやすいかどうか」をリアルタイムで検証できる
実務視点まとめ
walkthroughはレビューの“品質保証”ではなく“理解保証”です。
文章では伝わらない文脈・設計意図・迷いを可視化し、レビューを共同作業に変える力を持っています。
「とりあえず通す」から「一緒に作る」レビューへ──その第一歩がwalkthroughです。