walkthrough|コードを口頭で説明するレビュー手法とその効用

概要

walkthrough(ウォークスルー)は、実装者が自分のコードを口頭で説明しながらレビュアーと一緒に確認していくレビュー手法です。
文章ベースのレビューで伝わりにくい設計意図や懸念点を、リアルタイムの対話で補完できるのが最大の特徴です。

「黙ってコードを読む」のではなく、「説明を聞きながら一緒にコードを歩く」イメージです。

活用シーン

シーン 利点
大規模PRや初期設計レビュー 全体構造を把握しやすく、認識齟齬を減らせる
設計意図を含む判断の共有 コードでは伝わらない意図や判断根拠をその場で説明できる
新人育成や知識共有 言語化トレーニングとレビュー学習を兼ねる
緊急対応や短期集中レビュー 文章に時間をかけず、スピード感のある確認が可能

レビューが長引きそう・認識に差が出そう──そんなときほどwalkthroughが効果を発揮します。

実施手順の基本

  1. PR作成者がレビュアーにwalkthrough希望を伝える
  2. ZoomやSlack huddleなどで画面共有を開始
  3. 実装者が変更点・設計意図・迷ったポイントなどを順に説明
  4. レビュアーは質問や補足、改善提案をリアルタイムで返す
  5. 必要に応じて議論し、修正方針を合意

walkthroughは「通すため」ではなく、「理解して合意するため」のレビューです。議論の余地を残すことが重要です。

会話例:walkthrough中の対話

Author: この処理は複数条件を含んでいて、最初は分岐で書いたのですが読みづらかったのでstate管理に寄せています。
Reviewer: なるほど、それでuseReducer使ってるんですね。状態のパターンは一覧化されてますか?
Author: そこまではしてないですが、補助的なテーブル作ってもいいかもしれません。

効果と副次的メリット

  • 設計意図や背景を伝える練習になる
  • 仕様ミスや前提誤認が早期に発見されやすくなる
  • レビュアーの理解速度が上がる(視覚+聴覚の相乗効果)
  • 実装者が設計・構造を言語化することで自分でも問題に気づける

自分のコードを「説明していて気づく」ことは意外に多いです。walkthroughはその機会を与えてくれます。

チームでの導入方法とルール整備

  • PRテンプレートに「walkthrough希望」チェック欄を追加
  • 毎週特定の時間をwalkthrough枠として確保
  • 「重要PRはwalkthroughでレビュー開始」の方針を整備
  • 終了後にレビューコメントを残すことで記録にも残す
### このPRについて
- [x] walkthrough希望(対面 or huddle)
- [ ] 通常レビューでOK

関連用語

  • pair-review:レビュアーと実装者が一緒にレビューするスタイル
  • responsibility:意図の説明を通じて責任の明確化にも貢献
  • readability:「読みやすいかどうか」をリアルタイムで検証できる

実務視点まとめ

walkthroughはレビューの“品質保証”ではなく“理解保証”です。
文章では伝わらない文脈・設計意図・迷いを可視化し、レビューを共同作業に変える力を持っています。
「とりあえず通す」から「一緒に作る」レビューへ──その第一歩がwalkthroughです。