Maintainability(保守性)とは
Maintainability(保守性)とは
定義と概要
Maintainability(メインテイナビリティ)とは、ソフトウェア開発においてコードが将来的にどれだけ「修正しやすく、理解しやすく、テストしやすいか」を示す品質特性のことです。
ISO/IEC 25010 などのソフトウェア品質モデルでも主要な指標として定義されており、
レビューでは「このコードは保守しやすいか?」という観点での指摘が多く行われます。
保守性が問われる背景
現代の開発では、初回の実装コストよりも、その後の保守コストの方が圧倒的に高くなるケースが多く、次のような問題が発生しやすいです:
- ロジックが複雑で、触るのが怖い
- 名前や責務が曖昧で、読んでも意図がわからない
- 修正が他所へ波及する(密結合)
保守性をレビューで意識することは、将来のバグ修正・機能追加・引き継ぎの効率に直結します。
レビュー時に見るべき保守性の観点
観点 | 評価ポイント | 指摘例 |
---|---|---|
命名 | 処理の意図を反映しているか | この変数名、使い方に対して抽象的すぎませんか? |
責務分離 | 関数やファイルが単一責務を持っているか | この関数、3つの異なることをしていますね |
繰り返し処理 | 同じコードが複数箇所に存在しないか | 重複しているので関数化を検討しては? |
条件の複雑性 | ネストや論理式が過剰になっていないか | else-if が深くなりすぎて読みにくいです |
依存関係 | 他のモジュールへの依存が明示されているか | この関数、暗黙的にグローバル変数に依存しています |
実務での会話例と改善提案
Reviewer:
この処理、今は動いてますが、3ヶ月後に別の人が触ると混乱しそうです。
もう少し命名と責務の整理ができると保守性が高まると思います。
Developer:
確かに冗長でした。関数を2つに分けて、コメントも追加してみます。
保守性を高めるための技術と手法
✔ 命名規則の統一(Naming Consistency)
- 状態変数は
is〜
、コレクションは複数形など - 意図が伝わる名前づけでレビュー不要な読みやすさを実現
✔ DRY(Don’t Repeat Yourself)の徹底
- 同じコードのコピペ → 関数化 or 共通モジュール化
✔ 循環的複雑度の抑制(Cyclomatic Complexity)
if-else
やswitch
が多い関数は小さく分割- Lintで複雑度の閾値を設定する(例:
max-complexity
)
✔ モジュール設計の工夫
- 関心の分離(Separation of Concerns)
- データ取得、表示処理、ロジックを明確に分離する設計
ツールを用いた保守性の可視化
- SonarQube:保守性や技術的負債を定量評価
- ESLint / TSLint:構造的複雑度・無駄な依存を警告
- CodeScene:変更頻度と構造的リスクを視覚化
まとめ:Maintainabilityは“未来への読みやすさ”
- 保守性は「今の読みやすさ」ではなく「未来の修正しやすさ」
- 名前、責務、依存、複雑度といった設計の基本が問われる
- レビューでの保守性指摘は、開発者の設計力を支えるフィードバック