LGTM文化とレビューアーのふるまい方

コードレビューの場面で頻繁に目にする「LGTM(Looks Good To Me)」という表現。
一見便利でシンプルな言葉ですが、使い方を誤るとレビューの質や信頼性に影響を与えることがあります。
本記事では、レビューアーとしての視点からLGTMという文化の扱い方と、その言語的配慮について考えていきます。


1. LGTMとは何か?

LGTM は “Looks Good To Me” の略で、「自分が見た限り問題ない」「OKです」といった意味で使われます。
GitHubやGitLabなど、コードレビューを伴うプルリクエスト(PR)の場面でよく使用されます。

使用例:

LGTM 👍
LGTM(細かい部分まで確認済み)
LGTM. Please proceed with merge.


2. なぜLGTMが広まったのか?

  • シンプルで入力しやすい
  • チーム内でレビュー完了の合図として機能する
  • Slack・GitHubコメントでも略語で済ませやすい

特に大規模開発において、レビュー数が膨大になると、簡易的なレビュー済みの意思表示が求められがちです。
その意味で LGTM は「レビューが流れている」というリズムを保つ上では有効です。


3. LGTMがもたらす3つの問題点

① 実際に見たのかが不明

LGTM だけでは「どの観点で、どの範囲を見たのか」がまったく伝わりません。
結果として以下のような不信感を招くこともあります。

不信につながるケース
  • 「LGTM」と言ったのに、バグが混入していた
  • 「ちゃんと見てくれたのか?」とチーム内で疑心暗鬼になる

② 責任の所在が曖昧になる

レビューアーが「問題なし」と言ったにも関わらず不具合が出た場合、
そのLGTMは責任の放棄と受け取られるリスクがあります。

③ 書き手へのフィードバックが失われる

LGTMだけだと、実装者にとっては「何が良かったのか」「改善点はなかったのか」が伝わらず、
レビューが単なる通過儀礼になってしまう危険性があります。


4. レビューアーとしてのLGTMの適切な使い方

補足を添えるのが原則

LGTM 👍
・処理フローと命名の整合性を確認済み
・テスト追加もOKです
LGTM(軽微な修正ですが運用上は問題なしと判断します)

このように、観点・意図・範囲を明記することで、レビューコメントとしての価値が大きく上がります。

書き手への敬意を忘れない

LGTMです。読みやすくて助かりました。

ちょっとした一言で、チームの空気はずいぶん変わります。
レビューアーは、単に指摘者ではなく関係性のデザイナーでもあるという意識が大切です。


5. チームでLGTM運用ルールを持つべき理由

  • 「LGTMだけでOKなのか」
  • 「LGTMにはどの程度のレビューを含むべきか」
  • 「LGTMの代わりにどういう言葉を使うべきか」

これらはチームによって答えが違うため、レビューアーを中心に言語規範を整備しておくことが望まれます。

運用ガイドラインの例
  • LGTMは「観点記述付き」で使う
  • 確認観点が限定的な場合は「Approve(UIのみ確認)」のように補足
  • 若手へのレビューではLGTM禁止(育成観点で)

6. まとめ

LGTMは便利な言葉ですが、その背後にある文脈や行動が見えなくなった瞬間、
レビューの信頼性や文化そのものを損なう危険があります。

レビューアーとしてLGTMを使うときは、責任・観点・配慮の3点を明確にしたうえで、
言葉の力でレビュー文化を育てていく姿勢が求められます。


LGTMは「見たよ」ではなく「見て判断したよ」という意思表示であるべき。
レビューアーはその言葉の重みを自覚し、文化の水準を言葉から支えていきましょう。